培養室(LAB)

培養室(LAB)と培養士の業務

我々胚培養士が働いているのは、サークル状の診察エリアとは反対側の、あまりみなさんの目につかない場所にあります。

男性はよく来られるかもしれません、精液容器の受け取りカウンターのある場所です。

中は2つのエリアに分かれています。Sperm LABとIVF LABです。

クリーンな空気に調整してあり、みなさんを中にご案内することは難しいので、こちらで中の様子をご紹介します。実際にどのような設備・機器があって、どのようなことが行われているか知って頂いて、みなさんに少しでも安心して治療を受けて頂ければ幸いです。

クリーンエリアは空気を陽圧に保っており、循環式HEPAフィルターによって空気中のホコリの浮遊を極力減らした空間となっています。

蛍光灯はごく僅かですが紫外線を発します。そのため照明は天井や棚下、顕微鏡も含めた機器も全てLEDを使用して、精子や卵子受精卵に紫外線が照射されないようにしています。

SPERM LAB

ここでは主に精液検査、IUIや体外受精などに使用する精子の調整、データ管理を行っています。

業務内容

精液検査

顕微鏡を覗き、カウンターを片手に手動で行っています。機械で行う検査方法もありますが、当院では、精液所見が良好でも良くない場合でも対応可能な目視を用いています。

精子調整

精液中の不要物を取り除き、精子を濃縮して良い精子を回収するための手技です。当院では遠心による濃縮とswim up法を併用しています。

ARTオンライン入力

日本で行われるARTは日本産科婦人科学会に報告する義務があります。全ての症例の治療情報や出産後の母児の状態まで詳細な報告を行っています。

IVF LAB

ここは体外受精や顕微授精の心臓部です。精子調整を除くほぼ全ての工程がここで行われています。
培養液の準備・管理、採卵後の卵の確認、体外受精、顕微授精、受精卵の培養、凍結や融解が主な業務です。

業務内容

検卵

吸引した卵胞液を顕微鏡下で確認し、卵子を探します。

受精卵の観察

当院では基本的に採卵から1日目(Day1)、Day3、Day5、Day6に確認をしています。

受精卵を培養器の外に出すと環境が変化するので、極力観察回数は少なく、短時間で行っています。

顕微授精

1個の卵子に1個の精子を注入する受精方法。調整した精子の中から、運動性と形態の良好なものを選択し、慎重に注入します。

胚の凍結

当院では、採卵後の受精卵は一旦全て凍結して、ホルモンバランスを最適な状態に整えてから再度融解して子宮に戻す、凍結融解胚移植を推奨しています。細胞内に氷の結晶を作らない、「ガラス化法」という方法を用いて、液体窒素内で保存しています。

胚移植

ここまで大切に育てた受精卵を子宮に戻します。細さ1-2mm程度の柔らかいチューブを使用しますので、それ程痛みもなく、短時間で終了します。

TESE

精液検査を行って、精液中に精子が確認できなかった場合、精巣を切開し、精巣内の精子を回収する方法です。症例によって精子を回収できる確率は異なります。医師が採取した精細管の中から胚培養士2-3名で精子を探します。

培養液の準備

受精卵を培養したり、ICSIを行ったり、精子を凍結するなど、様々なシーンでその場に合った「培養液」が必要になります。培養液は事前に温めておいたり、pHを調整する必要があるので、翌日の業務に応じて前準備が必要となります。培養液がなければ何もできませんので、「準備」は一番重要な業務と言っても過言ではないでしょう。

LAB外での業務

胚培養士は、ラボの中で受精卵に関する業務だけを行っているわけではありません。培養結果の患者さんへの説明や治療相談。培養結果の解析や新しい治療方法の開発、学会などでの情報発信なども行っています。

説明業務

私たちは皆さんと直接話をする機会は多くありませんが、精子の凍結保存の説明や、採卵後、受精卵の培養結果の説明、移植前の受精卵の状態などの説明を行っています。それ以外でも精子や卵子、受精卵について気になること、不安なことがあればお声かけ下さい。

学会発表など情報発信

当院では最新の機器を用いて治療を行っています。特に高度の男性不妊症に対する治療では、世界的に見ても非常に多くの患者さんに治療を行っており、その症例も多様です。我々はその経験と、治療の発展性について積極的に学会などで発信しています。医師だけではなく胚培養士も、生殖医療の発展に向けて活躍しています。